「ヘルプマーク」って知ってますか?
ある朝、若い女性が突然乗車してきて、わたくしの隣に座っていたドアに近い老人に、「わたくし足が悪いんです、席を譲ってもらっていいですか?」と、かなり強引に詰め寄っていた。
「老人は、あ、そうですか」、と膝に抱えた荷物を網棚に上げて席を譲った。その女性は、ありがとうの言葉もなく座って、その後、スマホをいじりながら、イヤフォンをつけて満員電車の中で「三越前」まで過ごしていた。私の隣に座った彼女の手提げカバンには、いつの間にか『ヘルプマーク』がぶら下がっていた。彼女の前には、席を譲った老人が、結局、彼女が下車した「三越前」まで約50分ほど立ちっ放しのままであった。
この老人、「長津田」駅で始発の急行電車待ちをしていて、わたくしの後ろに並んで、かろうじて座る席を確保した人である。しかし、われわれが座った席は、「優先席」と云われている3人掛けの席である。私は真ん中に座り、その老人はドア側に座ることができた。
悲劇?は次の停車駅「青葉台」で起きた。停車した電車のドアが開くなり、いつもの様に乗客が、どやどやとなだれ込んだ。そして、何人かの後に入ってきた女性が、ドアの近くの座席にににじり寄ってきたのである。
老人の身になって考えてみると、真冬の朝(6時45分頃)のホームで電車待ちは寒い。私とほぼ同年代の人らしく、特に本日は今年一番の寒さと予想されている。辛いきもちはよくわかる。
そんな寒さを乗り越えて、やっと確保した座席だったはずなのに・・・。
私が三越前で下車した後ろに、いつの間にかあの彼女が続いていた。急ぎ足で歩いている私の後ろを普通の人並みに歩いてくるではないか!・・・・それは足の悪い・不自由な人の歩き方ではない。もちろん義足でもない。両足は、やや太めの、間違いなく健康そうな両足である。
えっ! 本当に足が悪いの?・・・・まさか?
そういえば、いつかの朝も、ステッキを突き付けて、「わたくしはこれだから、席代わってください」と、強引に座ったおっさんが、下車したら、ステッキもつかずにスタコラスタコラと歩いて行ったおっさんがいたことを思い出した。
『ヘルプマーク』とは、特に法律で定められた規格とか法的効力はないらしい。メーカーや自治体がタグを任意に作成しているケースが多いとのこと。
中には、若い女性たちがかっこいいとか、飾りやおしゃれの気分で面白半分にバッグにつけたりしているケースがあるとのこと。場合によっては、これを悪用することもありうるだろう。成りすましても証明したり、証拠を見せることもないだろうから・・・???
なんとなくすっきりしない光景であった。
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