≪食べものは燃料ではない・・という話>
「食べものは燃料ではない。カロリーと栄養成分だけで食べものを捉えていては「食」の本質を見失う」と、解説しているのは、生物学者福岡伸一氏(青山学院大学教授)
氏の【文芸春秋】11月号の対談で、次のようなコメント(抜粋)がある。
「・・・食べものは私達が食べたら全部カロリーになって、運動や体温維持や細胞の代謝に使われて消えてしまうのかというとそうじゃない。食べた物の半分以上の物質は、私たちの体そのものに成り代わっていくんです。
私たちの体は、ガソリンエンジンを積んだ車とは違います。単にガス欠にならないようにエネルギーを補給すれば、それが燃えて運動エネルギーや体温になるというように【機械】として体を考えるのは、根本的な間違いです。」という。そして、食べるという行為は、燃やしてエネルギーを生み出すだけでなく、実は私たちの体を構成している一つ一つのねじや歯車やばねのようなものが全部、食べ物と交換されている、あるいは食べ物によって作り変えられているのです」。つまり、私たちの体は、絶え間なく刷新されつつ動いているものだという。それで、その動的な回転を止めないために、私達は食べ続ける。
1日に必要な1500キロカロリーを一気に充足すればいいかというと、そうはいかないものらしい。一気に大量のエネルギーが投与されると、体にとっては大変な負荷になる。・・・【食いだめ】はダメなのです。
また、「食べることと、それを消化して代謝することには、ある種のサイクルが数時間ごとにあって、1日に朝昼晩と3回食べるというのは、長い歴史の中で人間が見つけた極めて合理的な対処法です」という。
そして「食べるという事は、口の中で咀嚼している間にだんだん味が出てくる。それが体の中に入って行って、少しずつ消化されていく。その過程で体はすでにそれを代謝する準備を始めています。その過程が常に循環しているという事で、プロセス自体が大事なんですよ。その意味では【口から、かんで食べる】という事が非常に大事です」という。
そんな氏の話から思い当たる節がいっぱいある。
・20代、30代の独身だと朝は食べない。食べてもせいぜい菓子パンか中華饅頭にペットボトルの水かコーヒーだ。夜はカップラーメン。1週間に1度も煮物やお浸しを食べない。
・だから食事の回数は1日1回か2回。それも不定期だ。「カロリーさえ足りていればそれでいいのか?」と言われる。
・栄養の偏りも当然ある。
もう一度氏の言を借りる。
「食べるという行為は、人間の体の面からみても食べ物の側から見ても、時間の流れと切っても切れない関係にある。そのことを無視して栄養成分表だけで食べものを見ると、「食」の極めて大事な側面を見失ってしまう」というのだ。
また、何を食べるかについては、
「大事なのは、たんぱく質です。人間は炭水化物は脂肪として体に蓄えることができますが、たんぱく質は蓄えられないからです。つまり、たんぱく質はカロリーに換算して、貯蔵できる燃料のように考えてはいけないものなんです」という。
難しい理論は別にして、要するに、食べるということは、単にカロリーを充足するだけでなく、それを時間の流れで捉えて行かなければならないものということだ。
その理想的な摂り方は1日3回、バランスの良い内容で、ゆっくり時間をかけて、よく噛んで食べるということであるという。(でも、独身男性諸君には難しいかもしれないが・・・・)