2007年7月発足以来続いている一期一会の飲み仲間
<雑誌~ひろい書き(その8)>
「中国経済はこの10年でクラッシュする」より ―イエール大学教授 陳 志武(チェンジ-ウ-)氏 文芸春秋 7月号― 【経済、領土両面で膨張政策を続ける中国。しかし、その〝膨張″は国内外で深刻な弊害をも引き起こしている。そうした中国を、中国人の知識人はどう見ているのだろうか。 陳志武氏は1962年、湖南省生まれ。中南工業大学理工学部卒業後、アメリカで経済学を学び、現在、イエール大学終身教授(金融学)を務める陳氏は、祖国に対し、こう警鐘を鳴らす。「尖閣有事で、中国経済は10年間後退する」「今後5~10年のうちに中国経済はハードランディングする」】 ・日中両国で、尖閣諸島をめぐる問題が紛糾しています。私は、これは中国にとって経済的にも極めて憂慮すべき事態だと考えています。両国間で紛争が起きたら、中国経済は10年間は後退してしまうからです・・・・・・・・。 もし今、中国が日本と軍事紛争を起こしたら、両国の経済に非常に悪い結果がもたらされます。海外の投資家や多国籍企業が今後の事業方針を大きく変更してしまうからです。海外企業はこれまでのようには中国に投資をしなくなるし、中国から撤退して行くでしょう。中国から輸入もしなくなるでしょう。その為、私は、軍事紛争が起きないよう願っているのです。 日本、中国、韓国の三国は、現在、世界の製造業の中心です。万一、紛争が起き、海上輸送路がわずか数日間でも閉鎖されると、アジア太平洋圏の経済に大きな影響を与えます。その影響は、直ちに米国社会にも及びます。世界貿易が混乱に陥ってしまうほど、紛争による経済的ダメージは多大なものになるのです。 [ダメージは中国の方が大きい] では、中国政府は尖閣問題にどう対処すればよいのか。・・・私は、中国の役人や友人に会うと、このような問いを投げかけています。 「中国政府は紛争によりもたらされる影響に対して準備ができているのか。社会に反日感情を積み上げているだけではないのか。この問題をどう終結させるつもりなのか。国粋主義的な報道をどう鎮めるのか―」 私は、両国がともに、戦争なしにはこの問題を解決できないと考えているのではないかと懸念しています・・・・・・・。 中国では、分別ある理性的な経済人や役人、知識人でさえ、日本側が先に対立の口火を切ったと考えています。・・・つまり、日本が先に行動したから、中国政府も行動を起こさざるを得なくなったというスタンスです。中国政府は、何の行動も起こさなければ、国内的な面目を失ってしまうことになります。 しかし、今後の見通しは決して悲観的なものではありません。今年、中国は前向きな方向に向かい、状況は改善するでしょう。中国の新政権は安定を志向すると思います。中国の指導者らは、必ずしも戦争を欲していない。尖閣をめぐる日中関係は、2013年後半は、ここ半年ほどは危険なものでなくなるはずです。中国からすれば、問題は日本政府の出方です。 中国人は日本人に対しては、韓国人ほどの怒りは持っていません。日清戦争で、中国は日本に8年間占領されたし、第2次大戦中に日本軍がとった行為も悲しいことではありますが、中国人は日本人に対して、韓国人ほどは憤慨していないのです。 特に、私の世代以降の若い世代は、日本の文化の影響を受けて育っています。70年代頃から、中国では徐々にテレビ番組が放送され始めましたが、中国で制作されている番組がほとんどなかったため、日本の映画やテレビ番組が流されていました。それらの作品に盛り込まれた日本の価値観の影響もうけています。山口百恵は私達のアイドルでした。 もし、万一、紛争が起きたなら、中国社会は日本社会以上の打撃に見舞われることになるでしょう。なぜなら中国では、市民が社会的安全を確保するのは難しいからです。日米には、災害や戦争などの危機に襲われても頼ることができる政府以外の組織がありますが、中国にはないのです。その為、紛争が中国の社会や経済に及ぼす影響は甚大で、これが数カ月以上続けば、中国が大きな危機に陥るのは間違いありません。 日本政府には、尖閣問題について、第一に、理性的に、また穏健に対応して欲しい。第二に、中国の政治を理解して欲しいと思います。同じことは中国政府にも当てはまります。 [成長の恩恵はすべて政府へ] 次に、中国経済の今後について論じたいと思います。私は、このままでは5~10年以内にハードランディングを迎えざるを得ないという考えです。 何故か。中国は30年余り後退なく経済成長を続けてきました。しかし、急成長が長い間続いたため、政策を決定する役人は勿論、財界人でさえ、政府が採用した経済成長モデルを過信してしまったのです。その為、地方政府では、高速電車や空港、鉄鋼業などのインフラに過剰な投資が行われるという事態が起き、不適切な投資も数多く行われました。 さらに問題なのは、あまりにもスムーズに成長してきたので、必要な改革が行われてこなかったことです・・・・・・・・。 中国では、土地や生産的資産が政府に所有されているため、経済成長が急速に進み、土地や資産の価値も増加しても、その増加分の多くは政府に還元され、個人世帯には還元されなかったのです・・・個々の国民がそれほどは裕福にならなかった理由です。資産価値の点で、経済成長の恩恵を受けているのは政府だけなのです。つまり、富がフェアに分配されていないのです。 この現状を改善するには構造改革が必要です。土地や企業を私営化して、市民が経済成長で生じた利益を得られるようにすべきです。また、政府は減税し、財政支出を削減し、資源などへの規制を減らし、インフラへの投資も減らすべきなのです。しかし、残念なことに政府は、これまで長い間、利益を享受してきたため、変革するインセンティブを感じていません。その結果、今もまだ、不必要な投資が行われ続けています。これから5~10年間は、このことが大きな問題となって来るでしょう。 そんな中国の目を覚まさせるには、ある意味、ハードランディングが必要なのかもしれません。危機が起きない限り、中国は構造改革に踏み切らないポジションを取り続けるでしょう。金融危機と経済危機が現実のものとなったとき、始めて構造改革に乗り出すことになると思います。そして、この二つの危機が、今後5~10年以内に起きる可能性は非常に高いのです。 危機はまず、地方政府で起きます。地方の高速電車や高速道路、空港などのインフラの建設は、銀行ローンと国債の発行を元手に行われましたが、財政赤字を抱える地方政府は銀行ローンの返済不履行に陥るでしょう。地方政府が財政赤字に陥ったら、銀行もトラブルに巻き込まれます。 中央政府におカネがある限りは、地方政府や国有企業が銀行や国債所有者に作った赤字は、中央政府が補填します。問題は、中央政府が財政不足に陥ったとき、その時、金融危機は避けられないものとなります。 [政治体制が経済的リスクに] とはいえ、危機の後に、政府が必要な構造改革を行えば、経済は再び成長路線に復帰できると思います。各国の経済力は、人口×1人あたりの収入ですから、必然的に、人口が多いほど経済大国になります。中国が世界最大の経済大国になるのは、ある種の必然だと言えます。 そうした未来像を踏まえた上で、中国には取り組むべき課題が沢山あります。 知的所有権と環境の問題については、中国は世界的に批判を受けていますが、中央政府はこれらの問題には、政策や法律を作って真剣に対応しようとしています。問題は、地方政府が破綻していることです。地方政府は十分な雇用を提供できておらず、十分な税収も得られていないため財政問題も抱えています。彼等は、知的所有権や環境の法律を順守すれば、地方にある多くの企業が閉鎖に追い込まれると考えているため、遵守しようとしないのです・・・・・・・。 中国がTPPに参加し、適切に知的財産法を採用すれば、中国でのイノベーションにもつながると思います、・・・思うに、中国が民主国家ではないから、〝中国牽制策″と呼ばれるようなTPPが生まれるのではないでしょうか。 中国が民主国家でないために、日中米間の様々な誤解も生じていると思います。今、中国は、日本がより米国寄りになって、自国が孤立することを懸念しています。ことに、尖閣問題では、中国人の多くが、日本は米国寄りになったと考えています・・・。 こうしてみてくると、中国の政治システムの特殊性が、民主国家の仲間入りをすることを妨げてきたとも言えます。今後、中国にとって大きな課題と言えるでしょう。 [日中の相互依存は続く] 最後に今後の日中関係について述べたいと思います。 日中の経済構造を見ると、製造業が重要な位置を占めているという点で、両国は類似しています。80~90年代初期、中国は自動車や電化製品などの市場で、日本に大きく依存していました・・・。しかし、今では中国ブランドの方が日本ブランドより優勢になりました。ある意味、日本への依存度が低下し、中国が大胆に一人歩き始めたことが、尖閣をめぐる紛争の一因にはあるのかもしれません。 とはいえ、日中の経済的相互依存はこれからも続いて行くでしょう。日本企業は、これまで中国に多くの投資をし、多くの雇用を生み出してくれました。また、中国の製造業が改善するのを援助してくれました。それにより、日本の人々は、中国から輸入される低価格商品の恩恵を受けることができました。 しかし、将来的成長という点では、13億人の人口を抱える中国市場の方が、日本企業により大きな成長をもたらすことになるでしょう。日本企業は、中国の地方に住む生活水準の低い多くの農業従事者をターゲットに、今後も車や電化製品を売り込むことができるからです。一方、中国は日本への輸出にはあまり成長の可能性を見出せません。日本は人口増加が少なく、地方も十分に生活水準が高いため、市場としては頭打ちの状況にあるからです。 いずれにせよ、はっきり言えるのは、両国の経済にとっても、今後も日中が闘うようなことになってはならない、ということです。 私は、機会があると、このような批判的意見を述べていますが、今のところ、中国政府から危険人物とみなされてはいません。それどころか、役人たちにアドバイスしており、彼らも、建設的な私の考えに耳を傾けてくれます。 私は中国政府に一刻も早く気づいてほしいのです。彼らがしていることが将来どんな重大な結果をもたらすかを。そして、中国の持続的成長のため、私のアドバイスを実行に移してくれたらと願ってやみません。 <同じ地域・同じ民族等で形成されている国家と他の国家間では、それぞれ利害も異なるし思想・主張も異なる。その為に紛争が絶えないのが人類の歴史だが・・・・。 相互依存・共存共栄のためには自己中心(主張)のみに終始するのではなく相互理解と互譲の精神が不可欠という。・・・・・・人間関係も然りです> PR |
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