2007年7月発足以来続いている一期一会の飲み仲間
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<「雑誌~ひろい書き」・・・その7>
≪なぜ、いま漢方なのか≫
「早く治るか、ちゃんと直すか―それが西洋医学との違いです」より、
  文芸春秋 6月号 漢方医 櫻井正智氏・・北里大学東洋医学総合研究所)
 
 「景気は“気”から」という言葉を最近メディアで良く見聞きします。アベノミクスへの期待値で登場する決まり文句です。気は「気血水理論」を構成する一つで、東洋医学(漢方医学)の概念です。
 漢方医学で言う気とは、人間の活動を支える根源的エネルギーを指します。気の不足は、だるさや抑うつにつながり、気の巡りが逆流すると動悸やのぼせを起こします。同じく、「血」と「水」も栄養などを体内に回して物質的に支えるもので、不足したり停滞すると体に症状として現れます。
 
 実に怪しげな考え方だと思われるでしょう。“気”があやしく思えてしまうのは、数字による実証化ができないことへの不安があるからです。
 現代医学の物差しから見ると、“気”は目に見えないため、実証化ができません。
 では、最近なぜ現代医学が漢方医療を併用し始めたのでしょうか。漢方医学へのニーズが高まる背景には、簡単に言うと、「未病」への効果があるからです。
 日本未病システム学会は、「未病」を次のように定義しています。
 1、自覚症状はないが、検査値に異常が認められ、放っておくと病気になる
もの
 2.自覚症状はあるが、検査値に異常が認められない状態
 
経験がありませんか? 「俺は絶対に病気だ。疲れが酷いから、絶対に異常値が出るぞ」と思って病院に行くと、健常と診断される。逆に、元気だと思って会社の健診を受けると、コレステロール値等が非常に高い。
 現代医学ではまず検査をして病名がつかないと、治療に入りません。漢方は病名が分からないけれども、今出ている症状に対して治療を行う。つまり、現代医学と漢方は方法論が違うのです。
 
 二千年前の漢方の教科書である「黄帝内経」(こうていだいけい)の中に、未病についてこんな記述があります。
【聖人は既に病んでしまったものを治すのではなく、未病を治すものである。また、国が既に乱れてしまってから治めるのではなくて、乱れないうちに良い政治を行うものだと古くから言われる。病気になりきってしまってから薬を飲んだり、国が乱れてしまってから政治を行うというのは、たとえて言うなら、のどが乾いてから井戸を掘ったり、戦いが始まってから兵器を製造するようなもので、遅きに過ぎる】 この考え方こそ、漢方の基本です。つまり、
【熟達した上手な医者は、未だ病気が現れないうちに病の芽を摘み取ってしまい、病気になってから治療することはない】
 
未来のための治療。
 若しくは、パワーアップに向けた体質改善。その為には、その人の「証」と呼ばれる状態を把握して、細やかな症状に合わせて生薬をさじ加減で組み合わせるのが漢方です。漢方は症状を訴えているその人だけに効く。これをセレクション・スタディと言います。特定の人にだけ効く薬。つまり、オーダーメイド医療なのです。
 
 もちろん現代医学は必要です。怪我や事故には手術が必要で、漢方に救急医療はできません。
今は、高血圧、糖尿病、癌という長い生活の中で生まれる死因に社会の関心が移っています。時間をかけて出来た病気は、やはり時間をかけて緩やかに直す漢方がいいのです。血圧などは西洋医学の薬を飲むと、あっという間に下がります。しかし、降圧剤は飲むのを止めると、またすぐに血圧が上がってしまう。つまり、一生飲み続けなければならないのです。
早く治すか、ちゃんと直すか。これが現代医学と東洋医学の違いと言えるでしょう。漢方薬は体質を変えるから、ある程度飲めば、あとは飲まなくても良くなります。
 
≪なぜ高齢者にいいのか≫
現代医学との対比で「異病同治」という特徴があります。現代医学では一つの病態に対して、治療法がぶら下がります。高血圧の時はこの薬、糖尿病にはこういう治療法といった具合です。しかし、ストレスで高血圧になった40歳と、老化で高血圧になった80歳は、原因もプロセスも違うはずです。ところが、現代医学では、「高血圧」という病名で一括りにして、同じ治療をしている。誰でも血圧が下がるように無理やり下げているのです。
一方、漢方は高血圧になった経緯を重視するので、「証」を取ります。「異病同治」とは、病名でなく、病状によって処方が決まります。黄連解毒湯という漢方は、吐血、下血、脳出血、高血圧からノイローゼや胃炎にまで使えます。病名に対する処方ではなく、「証」に対する処方だから、一つの漢方で異なる病状に対処できるのです。
 
50歳以下に支持される理由≫
漢方は気を使って診て、気を使って治します。それは、漢方薬に含まれている気で作用させる場合もあるし、人の気を介して行う場合もあります。人の気が解明されていない以上、漢方薬が世間から怪しいと言われても仕方がない部分があります。実は、こうした漢方の考え方になじみやすくなっているのは、高齢者ではなく50代以下の人達です。
今の高齢者は、高度経済成長を支えてきた人達です。時代が成長期にある時、人は「頭が痛いけど、アスピリンを飲んでもうひと踏ん張りしよう」という発想になります。痛みが止まるから「これは良い」と思うのですが、何年も続けていると、「ひょっとしたらまずいのではないか」と気づき始めたのが50代以下の若い世代です。外来で来られる患者さんも、高齢者は「点滴を打ってくれ」とか、「痛みを止めてくれ」と即物的な治療に慣れてしまっています。逆に、若い人の方が「注射は打たないで」「できるだけ切らないで」というようになりました。これは社会の流れと密接に繋がっています。
 
時代が変われば、価値観や経済状況は変わります。どのような時代が来ようと、生き抜くためには健康でなければいけません。症状が出たり、病名が付けられる前に日常生活に少し工夫を積み重ね養生を取り入れた生活を続ければ、気力が充実します。それは仕事や家庭生活の満足度を高くするはずです。
早期発見、早期治療、予防医学は現代医学でも言われており、誰しも馴染みはあると思います。より健康になるにはどうしたらいいかは、漢方医学に答えが用意されています。寒ければ体を温める、冬物の野菜を鍋で食べるとか、暑ければキュウリやスイカで体を冷やす。この「医食同源」の考え方は、70年代に外食産業が作り、今再び持て囃されていますが、これも東洋医学の物差しです。時代がこれまで否定してきた“気”を直感的に再び求めている気がするのです。

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