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2007年7月発足以来続いている一期一会の飲み仲間
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 <大特集「食と薬の常識が変わった」
   -飲んでもムダな薬リストー
         作者:医療ジャーナリスト 鳥集 徹 
                     文藝春秋 5月号より抜粋>

 ある80代女性の実話である。
 風邪をこじらせて、かかりつけの開業医にかかった女性は、胸のレントゲン写真を撮ることになった。その結果、肺炎ではなかったが、肺に何か気になる異変が見つかった。それを見た開業医は、「念のためCTを撮って、詳しく調べた方がいい」と伝えた。そこで女性は、紹介状をもらって、大学病院で追加の検査を受けることになった。大学病院でCTを取ると、やはりいくつか正常と異なる変化が見られた。医師は彼女に、「3-4か月ごとにCTを取り、経過観察が必要です」と伝えた。さらに、「念のため」と云われ、エコー検査も受けることになった。すると甲状腺に小さな異変が見つかったので、女性は針を刺して組織を採り、細胞を調べる生検も行うことになった。
 こうして女性は、高齢であるにもかかわらず、何度も大学病院に通うことになった。最後には『どちらも心配ありません』と診断されたのだが、その検査結果をもらうのに、丸1年かかったのだ。
 肺炎かどうかを確認するのに、最初のX線検査は必要だったかもしれない。だが、その後の検査はどこまで必要だったのだろうか。最終的に[異常なし]のお墨付きはもらえたが、女性は1年にわたり【重い病気かもしれない】と不安な日々を過ごすことになった。其れだけでなく、度重なる「念のため」の検査によって、決して安くない医療費を本人と国民が負担することになったのだ。

 佐賀大学名誉教授で、現在、京都にある七条診療所の所長を務める小泉俊三医師(総合診療医)はこう話す。

 「病気を見逃すと責められるかもしれないので、医師には『念のために検査をして、病気を否定しておきたい』という心理が働きます。また、女性の病歴を把握できていれば、追加の検査はしないという判断ができたかもしれませんが、大学病院の医師は忙しくて、ゆっくり問診をする時間が取れません。そのため情報不足を補おうと、つい検査をオーダーしてしまうのです」

 検査がむやみに増えてしまう背景には、そんな医師側の事情があるという。
 
こうした検査が、過剰な投薬や手術につながることも少なくない。



「賢い選択」という運動
 
実は、世界中の医療界で、こうした過剰な検査や治療が必ずしも患者の幸せにつながっていないとして、見直しの機運が高まりつつある。なぜなら様々な研究で、検査や治療の効果が期待ほどではなく、極めて限定的であることを示すエビデンス(科学的証拠)が積み重なってきたからだ。そうした新しい知見に基づき、意識の高い医師たちが現在行われている検査や治療が過剰になっていないかを検証し、本当に必要十分な医療を提供しようという運動を始めた。それが、
「チュージング・ワイズリー(Choosing Wisely=賢い選択)」運動だ。

 日本でも昨年10月、「チュージング・ワイズリー・ジャパン」が正式に発足した。2017年3月現在、参加学会は76まで増え、リストの数は全部で約450項目にも及んでいる。また、各学会とコンシューマー・リポートによる患者向けのリスト約120項目も公表されている。その中から、日本の医療でもよくおこなわれている項目をピックアップしたものが公表されているが、そのうち代表的なものを次回記載したい。
 



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