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【腸、腎臓は短命臓器の寿命に備えよ】――慶応義塾大学医学部教授 伊藤 裕氏
「平均寿命世界一」の冠を戴く日本人。人間の長寿は、体内のすべての臓器が健康を保つことではじめて実現する快挙だ。ならばもっと個々の臓器の寿命に目を向けるべきではないのか――。伊藤教授は、老化の早い臓器と遅い臓器の違いを知るべき、と説く。
体は数多くの『臓器』で構成されていて、それぞれが関連しあいながらも独立した働きをすることで成り立っています。それならもっと個別に、臓器に目を向けることも大事なのではないか、研究の原点はここから始まる。
心臓も脳も、腸も肝臓も、すべての臓器が「砂時計」を持っていると考えてください。時計の砂は生まれた瞬間から落ち始め、すべてが落ち切ったときに、その臓器の寿命は尽きます。
心臓のように常に動き続けている臓器は寿命も短いと思われがちですが、意外にそうでもありません。また、脳はすべての臓器の機能を支配して疲れが速いように思われていますが、寿命と云う点では決して短くはないのです。
人間の体の中で『臓器の時間』が短いのは、腸と腎臓なのです。血液が臓器の機能維持の生命線であることは言うまでもありませんが、腸の血液消費量は全身の血液の30%、腎臓は20%を占め、血液消費臓器ランキングの第1位と第2位です。多くの血液を使う腸と腎臓はそれだけ多くのエネルギーを使っているのです。腸と腎臓は、なぜそれほどまでにエネルギーを使うのかと云えば、ともに「吸収」と云う、骨の折れる仕事を担当しているからです。
<メタボリックドミノが起きる> メタボとは、内臓脂肪が蓄積された肥満が原因となり、高血圧や高血糖などの生活習慣病が併発した病態のことです。これを放置すると将来動脈硬化を引き起こし心臓病や脳卒中などが発生するリスクを高めることが明らかとなっています。実は腸は、メタボリックシンドロームを引き起こし、そしてどんどん進める“腸本人”なのです。
腸の本来の仕事は大きく二つあります。一つは「食物の消化吸収」、もう一つは食物と一緒に体内に侵入しようとする外敵の排除、つまり「腸管免疫機能」です。腸の老化が進めば、腸の免疫力が落ち、さまざまなバイ菌などの外敵が侵入しやすい環境ができます。過食するとそれだけ多くの外敵が体への侵入を試みることになるのです。その結果、さまざまな臓器で炎症が続き、それぞれの臓器の障害が起こります。体は栄養素をうまく利用して消費することができなくなって、どんどん肥満、メタボの病態が進んでいくのです。
腸の老化のスピードが速まりメタボが進むと血管が障害されて、各臓器で酸素不足になります。この段階で最初にダメージを受けるのが、酸素不足に最も敏感な腎臓です。腎臓に不具合が生じると、その情報は腎臓神経によって脳に伝えられます。すると脳から心臓に行く神経がその変化を感じ取り、興奮することで心臓をフル回転させるようになり過剰な負担がかかります。こうして、腎臓病の人は心筋梗塞、心不全の発症リスクが高まることが、最近の研究で分かってきました。
初めは内臓脂肪が溜まる肥満だけだったのが、それが高血圧を呼び、脂質代謝異常症、糖尿病、動脈硬化などと拡大していく。一つの臓器が病気になると、関係する他の臓器にも機能の低下が起こっていく関係は『臓器連関』と云われています。(メタボリックドミノと呼んでいます) 逆にいえば、キーとなる臓器の老化を遅らせることができれば、それに連動して他の『臓器の時間』もゆっくりになる。そのキーとなる臓器こそが、腸と腎臓なのです。
腸と腎臓にはそれぞれが原因となって起こる代表的な病気があります。それは、腸=糖尿病、腎臓=高血圧です。この二つの病気を防ぐため、過食や塩分の取りすぎ、運動不足を解消するなどして、腸と腎臓に対するケアを確実に励行することで腸と腎臓の時間の進行を遅くすることができます。そうすれば、身体の他の様々な『臓器の時間』も遅くすることができるようになり、長寿に結び付くのです。
<文藝春秋 6月号 【腸、腎臓は短命臓器の寿命に備えよ】 慶応大学医学部教授 伊藤 裕氏より抜粋> PR |
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