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2007年7月発足以来続いている一期一会の飲み仲間
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愛(いと)しのボギー・・・女神が松山にほほ笑んだ理由

 いまなお日本中が松山英樹のマスターズ優勝の余韻に浸っている。

 オーガスタ・ナショナルの18番でウイニングパットを沈めたあの日、マイクを向けられた松山は「朝からずっと緊張していた。最後まで緊張しっぱなしで終わった」と興奮冷めやらぬ様子だった。そんな夢見心地の中で彼の口をついたのは、こんな言葉だった。「これまで日本人はメジャーに勝てなかった。僕が勝ったことで、これから日本人が変わっていくんじゃないかな」

 優勝会見でも帰国会見でも、松山は日本の子供たちへの思いを何度も口にした。「日本人もできるとわかったと思う。僕もまだ頑張るのでみんなメジャーを目指して頑張ってほしい。僕みたいになりたいと思ってくれたらうれしい」

 

 10年前、アマチュアとしてマスターズに初出場したころの松山は、思いのままに話す明るい大学生だった。だが、プロ転向後は一打の重みとともに一打の重みを知ったからなのだろう。口数は激減し、素顔もあまり見せなくなった。

 しかし、大勢の目に触れない場所では異なる一面を見せることもあった。彼はいつも子供たちに優しい視線を投げかけており、大声でサインを求められずにいたシャイな子供には、とりわけ敏感だった。

 試合会場内の道路の対岸にたたずんでいた少年の「ヒデーキ!」の必死の呼び声に反応し、自ら道路を横断して走り寄った松山を目にしたときは、少々驚かされた。大観衆が詰め寄せたプロアマ戦の喧騒のなか、「マツヤマ~」と泣き出しそうに読んでいた少女のか細い声をキャッチし、ティーショット後に彼が歩み寄ったときは、たいそう驚かされた。

 

 かってパドレイグ・ハリントン〈アイルランド〉は2007年全英オープンの優勝争いの真っただ中、ロープ際で寒そうに車椅子に座っていた高齢女性に気付き、自分のウインドブレーカーをさりげなく膝にかけてあげた。そんなハリントンが勝利したとき、あの車椅子の女性は本当は勝利の女神だったのではないかと思ったことがあったが、今年のマスターズで松山が勝利したときは、あの少年少女がグリーンジャケットを運んできたように感じられた。

 小さな存在に気付き、温かさを注ぎ込むような鋭く優しい感性が、メジャー制覇という偉業達成には必要なのかもしれず、それが備わったときに女神がほほ笑むのではないか。松山優勝の余韻の中、私はそんなことを考えていた。

(ゴルフジャーナリスト 舩越園子氏 2021425日「朝日新聞」夕刊より)

 

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