SUNTORY 「美感遊創」vol.160 より抜粋
「自分の老い方は自分でデザイン」
アクティブで若々しいシニアが増えており、それを裏づける調査結果もあります。
ただし、歳を重ねるほど健康状態の個人差が大きくなるのも事実。
それだけに、これからは個々の老化のペースを自分でコントロールする
“セルフエイジング”という発想が重要になってくると言えそうです。
どうすれば、自分の老化を自分でデザインしていけるようになるのでしょうか?
そのカギを、老化研究と老年医学の第一人者に伺いました。
(監修:鈴木隆雄先生・・桜美林大学大学院老年学研究科教授)
「今の60代、70代は、心身も知力も若い!!」
国連の世界保健機関(WHO)では、65歳以上の人を高齢者としています。
また、前期高齢者とか後期高齢者などという区分もされています。
しかし、果たして本当に65歳や70歳の方々が高齢者に入るのでしょうか?
多くの方はまだまだとても元気です。高齢者とはいったい、何歳から指すのがふさわしいので
しょうか?
そのような漠然とした疑問も含めて、高齢者の定義をもう一度検討するための研究が国の研究 機関や様々な研究グループで進められてきました。
その結果、65歳以上の健康状態は、心身ともに昔と大きく違うことが分かり、2015年の日本
老年学会で発表されました。
<高齢者の若々しさを科学的に証明>
① 身体機能の若返り
1992年の65歳以上の平均値が、2002年では何歳以上の平均値に該当するのかを検証した結果、下記のように若いことが判明
◎ 握力
(男)4歳 (女)10歳若い!
◎ 片足立ち(バランス力)
(男)4歳 (女)3歳若い!
◎ 通常歩行速度
(男女とも) 11歳若い!
② 知力(知的機能)の若返り
2000年と2010年の40代以上の言語知能や動作機能などをチェックすると、ほとんどの知能検査の項目で男女ともに約10歳分、平均得点がアップ。60代、70代の成績が向上。
◎ 60代でも 10年前の40・50代並み!
◎ 70代では 10年前の60代並み!
③ 脳卒中の受療率が低下
65~84歳の高齢者が1996~2011年に医療機関で治療を受けた割合を分析。特に死亡や後遺症のリスクが大きいといわれる脳卒中の受療率が減っている。
◎ 80~84歳では男女とも 10年前の約1/2~1/3に減った!
◎ 75~79歳でも男女平均で 10年前の約1/2に減った!
「ただし、これから先は自分次第。個人差がどんどん広がる」
全般的には、5~10歳は若返っている現在の60代、70代ですが、それでも高齢になるほどに健康状態の個人差がだんだん大きくなっていきます。実際に、90歳を過ぎても心身の大きな病気などもなく、かくしゃくと生活を送っている人がいる一方、70代で病気やけが、骨折などをする人や、うつや認知症の疑いが出てくる人もいます。
年齢とともに心身の予備能力が落ちていますので、一度老化のスピードが加速すると、どんどん進んでしまうのが高齢期の特徴です。その結果、同じ年齢でも健康状態において差が大きく広がることになります。
では、ゆっくりと楽しく年を重ねていくには、どのような暮らしを心がければいいのでしょうか。実はそう難しいことではなく、後のページ上で示したように、こまめに【動き】、しっかり【食べ】、人と【つながる】ことです。
ただ、こうした自分にプラスとなる生活習慣も、だんだん面倒くさくなったり、さぼり始めたりしてしまいがちです。ここで、意識的に続けていくか、途中でやめてしまうかで、その後の老化のスピードは大きく違ってきます。3つの生活習慣の歯車をマイペースで回し続ける心がけこそ、自分の老化を自分でデザインできるかどうかの分岐点と言えるでしょう。
「いい習慣を続けられる日々、それを一番大切に!」
そして、ぜひ知っていただきたいのが、3つの生活習慣の歯車を長く回し続けていくために欠かせない機能です。
それが後のページの「歩行機能」、「認知機能」、「口腔機能」、「血管機能」。いずれも、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を高く保つために必要な機能で、3つの歯車をスムーズに回すための潤滑油ともいえるものです。
これらの機能の働きを常に高めるには、健診だけでなく、日ごろから老化の小さな変化を見逃さないことが重要。いつも体の声を感知しながら、自分に合ったセルフケアを続けていきましょう。それが何より大切です。
<うまく回れば、素敵な人生が待っている!>
◎ セルフエイジングに大切な3つの生活習慣
こまめに動く
しっかり食べる
人とつながる
◎ そのためには…、働きを高めておきたい機能がある!
◇歩行機能・・・脚力を支える筋肉と関節を大切に
歩行機能の衰えは、転倒だけでなく、筋肉量の減少や認知機能の低下にもつながります。脚力 を支える筋肉と関節の維持はセルフエイジングの第一歩。
◇認知機能・・・脳の働きに大切な栄養補給もしっかりと
面倒くさがりは、認知機能低下の初期サイン。いろいろな人と交流し、楽しむために動き、脳 の働きのために脂質などの栄養成分をとることが大切です。
◇口腔機能・・・こまめな口腔ケアと抗酸化力の増強を
かむ機能や飲み込む機能が低下すると、栄養面に加え、脳の働きにも影響が。そのおおもとは 歯周病と活性酸素。口腔ケアとともに体の抗酸化力アップを。
◇血管機能・・・血管の内皮細胞をしなやかに保つ工夫を
全身のライフラインである血管の弾力を支えているのが血管の内皮細胞。その機能が低下して 硬くならないように、食事の工夫と適度な運動習慣を。
老化のペースを自分でコントロールし、いつまでも人生を楽しみましょう!
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